「AIを導入したいが、うちには詳しい人間がいない」——中小企業の経営者からこの相談を数えきれないほど受けてきました。情報システム部門どころか、パソコンに詳しい社員が1人いるかどうかという会社で、生成AIやAI活用の話を聞くたびに「うちには関係ない」と諦めてしまう。

検索すれば、AI人材を採用する方法、社内で育成する方法、外部の専門家を伴走で使う方法といった記事は数多く見つかります。ただ、そのどれもが「最終的には社内に人材を残すべき」という前提で書かれており、その人材がそもそもいないから困っているという一番の悩みには、実はあまり答えていません。

この記事では、採用でも育成でもなく、外部の実装パートナーが人材の代わりに「決める」と「つくる」を担うという進め方を、私たち自身が専任のAI人材を置かずに経理・集客の業務を自動化してきた実践と、12の実装事例をもとに整理します。


なぜ中小企業にAI人材がいないのか|採用しても解決しない理由

中小企業にAI人材がいないのは、経営努力が足りないからではなく、採用という手段そのものが中小企業に不利にできているからです。

採用でAI人材を確保しようとすると、次のようなことが起きます。

  • AIエンジニアやDX推進の経験者は、大企業やIT企業がすでに高待遇で押さえており、中小企業の求人にはそもそも応募が集まりにくい
  • 仮に採用できても、「何を任せるか」が固まらないまま採用すると、入社後に業務とスキルがかみ合わず、数ヶ月で持て余してしまう
  • 求人を出してから内定・入社まで数ヶ月、戦力になるまでさらに数ヶ月とかかり、その間AI導入は事実上止まる
限られたAI人材を、多くの中小企業が奪い合う構造を示した図

採用は間違った選択肢ではありませんが、「今すぐ何かを変えたい」という中小企業のスピード感とは相性が悪い手段です。稟議書に「AI人材を採用してから進めます」と書いても、稟議はまず通りません。むしろ稟議で問われるのは、人材の有無ではなく、誰がどう実行するかという実行計画です(稟議の書き方で詳しく扱っています)。


育成という選択肢の限界|「教える人がいない」の壁

育成は方向性としては正しい選択肢ですが、教える人や仕組みが社内にない状態で始めると、着手はできても実装まで届かないまま止まります。

育成でAI人材を育てようとすると、次の壁にぶつかります。

  • 研修から実務で使えるようになるまで、早くても半年、通常は1年以上かかる
  • 育成担当者自身がAI業務改善の実務経験者でないと、研修が「ChatGPTの使い方」止まりになり、「どの業務をAI化すべきか」を見極める判断力までは育たない
  • 育成対象者は本業と兼務のため、学習が後回しになりやすく、途中で立ち消えになりやすい
育成にかかる期間と、業務の必要性が生じるタイミングのギャップを示した図

育成は「いずれ必要」な投資であって、「今すぐの一手」にはなりにくい選択肢です。この時間差を埋めない限り、育成という正しい方向性を選んでも、目の前のAI導入は前に進みません。


「外部を使うが、丸投げしない」が前進を止める本当の理由

多くの情報は「外部の専門家を伴走で使いながら、最終的には社内に人材を残すべき」と勧めますが、この前提こそが、人材がいない会社の前進を止めています。

「丸投げ禁止・社内に残せ」という助言自体は間違っていません。ただし、これは「育てば残せる人材が社内にいる」ことを前提にした助言です。今すぐの相談者が抱えているのは、その前提となる人材が最初からいないという、一段手前の悩みです。この前提のズレに気づかないまま「外部を使いつつ社内に残す」という理想形だけを追いかけると、結局「まず誰を育てるか」で足踏みし、AI化そのものが進みません。

「外部を使うが社内に残せ」という一般的な助言と、人材が最初からいないという現実の矛盾を示した図

AI業務改善は、「何をAI化すべきか決める」レイヤーと、「実際に動くものをつくる」レイヤーに分かれます(3つのレイヤーの詳しい整理はAI業務改善とは何かで扱っています)。人材不足を理由に足踏みしているとき、実際に不足しているのは、この「決める」と「つくる」の両方を担える人です。だとすれば問うべきは「誰を採用・育成するか」ではなく、「この2つを、今誰が担うか」です。


AI担当者がいなくても進める第三の選択肢|「決めて、つくる」を外に出す

採用でも育成でもなく、「何をAI化すべきか決める」ことと「実際に動くものをつくる」ことの両方を、外部の実装パートナーに一時的に肩代わりさせるのが、人材ゼロの会社が最短でAI導入を進める方法です。

3つの選択肢を比べると、違いがはっきりします。

選択肢

最初の成果が出るまで

社内の負担

得られるもの

採用

採用活動に数ヶ月+定着に数ヶ月

採用工数・継続的な人件費

定着すれば専任担当者

育成

半年〜1年以上

研修設計・本業との兼務負荷

育てば社内の理解者

外部の実装パートナー

数週間〜数ヶ月で最初の1業務が動く

業務の洗い出しに付き合う程度

動くAI業務改善+実装の型

採用・育成・外部実装パートナーの3つを、結果が出るまでの期間で比較した図

ここでいう外部の実装パートナーは、要件を渡して見積もりを取る一般的なAIの外注とは前提が異なります。外注は「何を作るか」がすでに決まっていることが前提の頼み方ですが、人材がいない会社にまず必要なのは、その「何を作るか」を決める部分ごと引き受けてくれる相手です。判断そのものを渡せる相手であれば、社内に専任のAI人材がいなくても、意思決定と実装は止まりません。

もちろん、これは業務のやり方や評価をすべて外部に委ねるという意味ではありません。何を優先し、どこまで任せるかという経営判断は会社に残ります。人材の代わりに担ってもらうのは、あくまで「決める」と「つくる」の実務的な部分です。


自社にAI人材ゼロで進めた、経理・集客のAI自動化

合同会社T-WORKSは、専任のAIエンジニアやDX推進部門を置かないまま、自社の経理と集客の業務をAIで自動化してきました。

経理では、領収書・請求書をスマートフォンで撮影するだけで、OCRとAIが仕訳データまで自動生成する仕組みを構築しました。集客では、SNSに投稿する文章をAIが自動生成し、運用の手間を減らす仕組みを組んでいます。どちらも、外部のエンジニアチームを常時雇用したわけではなく、「何を自動化すべきか」を自分たちで決め、「実際に動くもの」を自分たちで実装するという、この記事で説明した2つのレイヤーを社内の少人数で回した実践です。

専任のAI人材を置かずに経理と集客の自動化を進めた自社実践の流れを示した図

この2つを含め、他の業務での実装事例は業務別のAI実装事例12選にまとめています。専任のAI人材がいない状態から実装まで進めた経験があるからこそ、同じ状況にある会社の「決める」と「つくる」を、外部から代わりに担うことができます。

「御社の場合、何から人材の代わりを外に出すべきか」を一緒に整理しませんか。 合同会社T-WORKSの無料相談では、御社の業務を一緒に見て、何をAI化すべきか決めるところから、動くまでの実装を担います。お気軽にご相談ください。


【実践手順】社内にAI人材がいなくてもAI導入を進める4ステップ

ここまでの内容を、実際に進める順序に落とし込むと、次の4ステップになります。

ステップ1:AI化の候補業務を洗い出す。 誰か専任の担当者を置く前に、まず社内のどの業務に時間がかかっているか、どこにミスが起きやすいかを経営者・現場責任者で洗い出します。この時点では、AIで解決できるかどうかを厳密に見極める必要はありません。

ステップ2:1つの業務に絞り、外部パートナーと「決める」を一緒にやる。 洗い出した候補の中から、効果を実感しやすい業務を1つだけ選び、外部の実装パートナーと一緒に「本当にAI化すべきか」「どこまでAIに任せるか」を決めます。ここを丸ごと任せきりにせず、自社の業務知識を持ち寄って一緒に決めることが、後の運用のしやすさにつながります。

ステップ3:小さく動くものを実装してもらう。 決めた範囲について、実際に動く仕組みを外部パートナーに実装してもらいます。全社展開を前提にせず、まずは1業務・少人数で運用を始め、実際に動くかどうかを確認します。

ステップ4:運用しながら、社内に必要な役割だけを見極める。 運用実績が積み上がったら、その時点で初めて「社内に何を残すべきか」を判断します。専任のAIエンジニアが必要なのか、運用担当が1人いれば足りるのかは、実際に動かしてみて初めて分かります。採用や育成は、この段階で必要な分だけ検討すれば十分です。

社内にAI人材がいなくてもAI導入を進める4ステップを示した図

実装が動き出すと、次に待っているのは現場の受け止め方という別の課題です。導入自体への社内の反対が起きた場合の向き合い方は、現場が反対する理由と乗り越え方で整理しています。


よくある質問

いずれは社内にAI人材を置くべきですか?

業務の規模や頻度によります。外部の実装パートナーと一緒に1〜2業務を動かしてみると、社内に運用担当を置く方が効率的な規模なのか、外部に任せ続ける方が合理的な規模なのかが見えてきます。採用や育成の判断は、この見極めをしてから行うことをおすすめします。

外部に任せると、社内にノウハウが残らないのでは?

「何をAI化すべきか」を一緒に決めるプロセスに現場が関わっていれば、判断の視点は社内に残ります。残らないのは技術的な実装の細部だけで、そこは専任のAI人材を抱えるコストに見合わない会社にとっては、そもそも社内に残す必要のない部分です。

外部の実装パートナーと、いわゆる「AI外注」はどう違いますか?

本文で触れた通り、外注は「何を作るか」が決まっていることを前提にした頼み方です。実装パートナーは、その「何を作るか」を決める段階から一緒に担う点が異なります。人材も方針もない状態からであれば、後者の関わり方の方が前に進みやすくなります。

費用はどのくらいかかりますか?

対象業務の複雑さや、決める段階からどこまで関わってもらうかによって変わるため、一律の相場は示せません。目安の考え方はAI導入の費用相場で整理していますので、あわせてご覧ください。

そもそもAI導入をやるべきかどうかも決めきれていません。

その判断基準はAI導入、今うちがやるべきかで整理しています。人材の有無は、AI導入をやるべきかどうかを決める基準ではなく、やると決めた後にどう進めるかという実行段階の話です。


まとめ

社内にAI人材がいないことは、AI導入を諦める理由にはなりません。採用は時間とコストがかかり、育成は結果が出るまでに時間差があります。どちらも間違った選択肢ではありませんが、「今すぐ何かを変えたい」という中小企業の事情には合いにくいのが実情です。第三の選択肢は、「何をAI化すべきか決める」ことと「実際に動くものをつくる」ことの両方を、外部の実装パートナーに一時的に担ってもらうことです。

合同会社T-WORKSは、「何をAI化すべきかを決める」ことと「動くまで作る」ことを一気通貫で担う「AI業務改善パートナー」です。「決めて、つくる。」——専任のAI人材がいない御社でも、まずは1つの業務から、決めるところから一緒に進めさせてください。まずは現状を聞かせてください。

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