会議の文字起こしを渡すと、決定事項・担当と期限つきのToDo・発言の流れを自動で書き出す議事録システムを開発しました。T-WORKS が自社の打ち合わせでも使っているツールです。
このページでは、何を作ったのか、どう動くのか、そして実装上どこを工夫したのかを紹介します。
効果を示す数値は、中小企業の定例会議を想定したモデルケースに基づく想定値です(特定企業の実測ではありません)。入出力サンプルには架空の「株式会社みなとデジタル」を使用しています。
何を解決するためのものか
会議そのものより、終わったあとのほうが大変——。中小企業の現場でよく聞く声です。
1時間の打ち合わせが終わると、誰かが録音やメモを見返して議事録を清書し、「誰が・何を・いつまでに」やるのかを洗い出して共有します。この作業に毎回30〜60分。さらに、担当や期限が曖昧なまま進むと、後日「これ誰がやるんでしたっけ?」という確認が発生し、追加の時間を奪っていきます。
このシステムは、その「会議のあとの議事録づくり」を、文字起こしを渡すだけで終わらせることを狙ったものです。
どんなシステムか
ポイントは、AIに「議事録っぽい文章」を書かせるのではなく、会議の中身を次の3つの構造として取り出すことです。

- 決定事項 — その会議で「決まったこと」
- ToDo — これから「やること」(担当・期限つき)
- 発言の流れ — 誰が・いつ・何を言ったかの時系列ログ(後から根拠を追える)
要約してくれるツールは数多くありますが、現場で本当に必要なのは、きれいな要約より「誰が・いつまでに・何をするか」が抜け漏れなく残ることです。このシステムはそこに振り切っています。
入力と出力(実際のサンプル)
利用者の操作は、いつものチャットやフォルダに文字起こしを置くだけ。新しい画面を覚える必要はありません。

入力(会議の文字起こし・一部)
[10:00] 田中: それでは定例会議を始めます。まず先週のタスクの進捗から。
[10:02] 佐藤: ECサイトのリニューアル、デザイン案が3つ上がってきました。来週中に絞り込みます。
[10:05] 鈴木: 在庫管理システムの件、ベンダーから見積もりが来ました。今月中に共有します。
[10:08] 長谷川さん: 採用の件、来月から募集を開始したいです。求人原稿の準備が必要です。
[10:11] 田中: ヘルプページの更新、誰か手が空いている人いますか?……一旦保留にしましょう。
口語まじりの素のテキストです。「来週中」のような曖昧な期限や、「誰か」としか言われていないタスクが混ざっています。
出力(自動で構造化された議事録とToDo)
# 株式会社みなとデジタル 週次定例 議事録
日時: 2026-05-25 10:00–11:00
出席: 田中 / 佐藤 / 鈴木 / 長谷川悠
## 決定事項
1. ECサイトリニューアルのデザイン案を来週中に1案へ絞り込む
2. 採用募集を来月から開始する
## ToDo(担当者・期限つき)
| 担当 | タスク | 期限 |
|---|---|---|
| 佐藤 | デザイン案の絞り込み | 2026-06-01(来週中・推定) |
| 鈴木 | 在庫管理システムの見積もり共有 | 2026-05-31(今月中・推定) |
| 長谷川悠 | 求人原稿の準備 | 2026-06-01(来月・推定) |
| 担当未確定 | ヘルプページの更新 | 期限未確定(保留) |
加えて、Slack・Chatwork・メールにそのまま貼れる送付用テキストも出力します。
実装で工夫したこと
ここがこのシステムの肝です。設計の中心にあるのは、判断はAIに、正確さは決まった処理にという役割分担です。

1. 日付の計算をAIにやらせない
「来週中」「今月中」を会議日基準で具体的な日付に変換していますが、この計算はあえてAIに任せていません。日付変換をAIにさせると、同じ入力でも結果が毎回ぶれて再現性が失われるためです。期限の日付化・担当者の名寄せ・体裁の整形・抜けの検査は、すべてローカルの決定的なコードに分離しました。AIが担当するのは「会議から表現を抜き出す」工程だけ。これにより、誰がいつ実行しても同じ品質の出力が得られます。
2. 「わからない」を正直に出す
上のサンプルで、担当者名は「長谷川さん」→「長谷川悠」と参加者リストで名寄せしています。一方、誰のことか読み取れない発言は、推測で人名を埋めず「担当未確定」と明示します。「ヘルプページの更新」のように期限が言及されなかったタスクも、日付をでっち上げず「期限未確定(保留)」と残します。あいまいな情報を確定情報のように見せないことが、業務で使う上での信頼につながります。
3. 出力後に、システム自身が抜けを検査する
生成した議事録を、検証用の処理(フック)が自分でチェックします。担当や期限が欠けたToDoがあれば警告を出す仕組みです。実際の実行ログがこちらです。
$ python3 -m minutes_action.hooks.check_actions minutes.md
警告: 期限が未設定のアクションがあります: ヘルプ内容の更新
検証フック: 1 件の欠落を検出しました。(終了コード: 1)
人が目視で抜けを探さなくても、機械が拾ってくれます。
4. 品質をテストで担保している
日付化・名寄せ・整形・検査といったローカル処理は、自動テストで品質を固めています(現在 70 件のテストが通過)。AIを呼ぶ部分はモックに差し替えてテストできる構成にしてあり、外部APIに毎回つながなくても挙動を検証できます。コストのかかる会議全文は一度だけキャッシュに載せ、複数の抽出処理で使い回すことで無駄な再送信を避けています。
成果(想定モデルケース)
項目 | 導入前(Before) | 導入後(After) |
|---|---|---|
議事録作成の作業 | 録音を見返して清書、ToDoを洗い出す | 文字起こしを渡して、結果を確認・微修正 |
かかる時間 | 30〜60分 | 数分(確認・微修正のみ) |
担当・期限 | 抜けることがある | 常に明示(抜けは警告) |
表記ゆれ | 人によって解釈がぶれる | 参加者リストで名寄せ |
体裁 | 書く人によってバラバラ | テンプレートで常に統一 |
週に何度も定例会議があるチームほど、積み重なる効果は大きくなります。
上記は30分・参加者5名の定例会議を想定したモデルケースの効果です。実際の効果は会議の長さ・参加人数・文字起こしの精度によって変わります。数値は想定値です。
データの扱い
文字起こしを端末内で完結させる構成にもできるため、会議内容を外部に出さずに運用することも可能です。サンプルはすべて架空のデータで、実在の社名・個人名・金額は含みません。
御社の会議でも
このシステムは特定の会議ツールに縛られず、Zoom / Teams の文字起こしや、御社の議事録フォーマット・専門用語に合わせて形を変えられます。既存のワークフローに「乗せる」形で導入できます。
「会議のあとの議事録づくりを軽くしたい」「ToDoの抜け漏れをなくしたい」——そんな課題があれば、お気軽にご相談ください。
