仕様書・マニュアル・社内規程・記事といった長文ドキュメントを貼るだけで、階層要約・要点FAQ・スライド構成案を自動で書き出すシステムを開発しました。「全文を読む」「要点をまとめる」「共有資料に作り直す」という分断された3つの作業を、1回の入力に統合することを狙ったツールです。
このページでは、何を作ったのか、どう動くのか、そして実装上どこを工夫したのかを紹介します。
効果を示す数値は、中小企業で長文資料を扱う業務を想定したモデルケースに基づく想定値です(特定企業の実測ではありません)。入出力サンプルには架空の「株式会社みなとデジタル」の社内ドキュメントを使用しています。
何を解決するためのものか
「この30ページの仕様書、要点だけ教えて」「来週の共有用にスライドにまとめておいて」——長文ドキュメントを前にして、こうした依頼が積み重なる現場は少なくありません。
長文を扱う仕事は、実は3つの作業に分かれています。まず全文を読む。次に要点をまとめる。最後にそれを共有用の資料に作り直す。1本の長文を扱うたびに、読み込みで数十分、スライド化でさらに30〜60分。しかも、まとめる人によって粒度や体裁がばらつき、社内での再利用がしにくくなります。
このシステムは、その「読む→まとめる→資料化」の3分断作業を、長文を貼るだけで一気に片付けることを狙ったものです。
どんなシステムか
ポイントは、AIに「それっぽい要約文」を1つ書かせるのではなく、長文から3種類の成果物を同時に取り出すことです。
- 階層要約 — 全体サマリ+セクション別の要約(章ごとに要点2〜3行)
- 要点FAQ — 想定される質問と回答のドラフト(Q&A 5〜8件)
- スライド構成案 — 表紙+目次+本文+まとめの骨子(Marp / PowerPoint / Google スライドに貼れる形)
利用者がやることは、長文を「貼る」だけ。返ってきた骨子を、普段使っている資料作成ツールに「貼る」だけです。新しいツールへ全面的に乗り換える必要はありません。要約だけを出すツールは数多くありますが、現場で本当に欲しいのは「読む手間が減ること」と「そのまま共有資料になること」です。このシステムはそこに振り切っています。
入力と出力(実際のサンプル)
利用者の操作は、長文を貼り付けて、想定読者・要約の長さ・スライド枚数を選ぶだけ。下は、架空の社内ドキュメント「リモートワーク運用ガイドライン」(約1,600字・6章構成)を投入した画面です。

出力1:階層要約(全体サマリ+セクション別)
全文を先頭から通読しなくても、全体サマリと章ごとの要点カードで中身を「確認」できます。元の見出し構造(概要 / 1. 適用範囲 / 2. 勤務時間 …)が、そのまま要約のセクションに対応しています。

出力2:要点FAQ
「誰に適用される?」「勤務時間は?」といった、その文書に対して聞かれそうな質問を、回答ドラフトつきで自動生成します。FAQは人手レビュー前提のドラフトとして、画面にもその旨を明記しています。

出力3:スライド構成案
表紙→目次(全7項目)→本文→「まとめ」までを自動で構成します。各本文スライドは箇条書き3点程度に整え、Marp ソースとプレビューの両方で確認できます。

スライド構成案は Marp ソースのほか、PowerPoint や Google スライドにそのまま貼り付けられるアウトライン形式でも出力します。
実装で工夫したこと
ここがこのシステムの肝です。設計の中心にあるのは、判断はAIに、正確さと構造は決まった処理にという役割分担です。
1. 要約を「決定的」にして再現性を担保する
要約を毎回そのままAIに丸投げすると、同じ入力でも出力が毎回ぶれて、社内資料としての一貫性が失われます。そこで要約・FAQ・スライドの組み立てを担う中心部分は、入力本文からの決定的な変換処理に据えました。同じ長文を入れれば、必ず同じ要約・同じスライドが返ります。AIによる抽象的な言い換えに差し替える余地は設計上残しつつ、業務で使う部分は「いつ実行しても同じ結果」を優先しています。
2. 見出し構造を、そのまま資料の構造に写し取る
Markdown の見出し(# / ##)を検出して文書の章境界とし、それを「目次」と「本文スライド」にそのまま対応づけています。見出しがない文章に対しては、段落や字数で区切るフォールバック処理も用意しました。これにより、元の文書の構造を崩さずに、目次の整ったスライドへ落とし込めます。
3. 「スライド枚数の指定」を意味のある挙動にする
スライド枚数を指定すると、章が多い場合は末尾から隣接する章を決定的に束ねて指定枚数に収めます(このサンプルでは7章を本文5枚に集約しつつ、目次には全7章を残しています)。逆に、章が少ないからといって内容を薄く引き伸ばして水増しすることはしません。「ちょうどいい枚数に、意味のある単位で」まとめます。
4. 出来上がった資料の体裁を、システム自身が検査する
生成したスライド構成を、検証用の処理(フック)が自分でチェックします。各本文スライドの箇条書きが多すぎ・少なすぎないか、空の見出しがないか、表紙とまとめが揃っているかを機械的に確認する仕組みです。実際の実行ログがこちらです。
$ doc-summary check samples/expected-output/slides.marp.md
[check_slides] OK(スライド構造に問題なし)
(終了コード: 0)
AIが作った資料の体裁崩れを人が目視で探さなくても、機械が拾ってくれます。分割・要約・整形・検証といった決定的処理は自動テストで品質を固めており(現在 55 件のテストが通過)、AIを呼ぶ部分はモックに差し替えて検証できる構成にしてあります。
成果(想定モデルケース)
項目 | 導入前(Before) | 導入後(After) |
|---|---|---|
長文の読み込み | 全文を通読して要点を把握(数十分) | 全体+セクション要約を先に確認(数分) |
共有資料(スライド)化 | 要約を手作業でスライドに再構成(30〜60分) | スライド構成案を自動生成し、貼るだけ |
FAQ・問答の整理 | 都度ゼロから作成 | 要点FAQのドラフトを自動生成(要レビュー) |
成果物の粒度 | まとめる人によってばらつく | 表紙+目次+本文+まとめで一定 |
必要スキル | 要約力・資料構成力に依存 | 長文を貼るだけ(新ツール導入は不要) |
長文資料を扱う頻度が高いチームほど、積み重なる効果は大きくなります。
上記は約2,000〜数万字の長文ドキュメントを扱う業務を想定したモデルケースの効果です。実際の効果は文書の長さ・構造・求める精度によって変わります。数値は想定値です。
データの扱い
入力サンプルはすべて架空の「株式会社みなとデジタル」の社内ドキュメントで、実在の社名・個人名・取引先・金額・個人情報は一切含みません。要約・FAQ・スライドはすべて入力本文からの変換であり、外部知識の混入や事実の捏造はありません。社内文書を端末内で処理する構成にもできるため、機密性の高い資料を外部に出さずに運用することも可能です。
御社の資料作成でも
このシステムは特定の文書形式に縛られず、御社の仕様書・マニュアル・規程・議事録や、社内で使っているスライドテンプレート・専門用語に合わせて形を変えられます。PDFやURLからの取り込み、PowerPoint ファイルの直接生成といった拡張も、業務に合わせて組み込めます。既存のワークフローに「乗せる」形で導入できます。
「長文を読む時間を減らしたい」「会議資料づくりの手間をなくしたい」——そんな課題があれば、無料相談でお聞かせください。
